テキストサイズ

誰も見ないで

第14章 文化祭


みんな?
みんなってほど見られてないとは思うけど


そんなことを考えていると、目の前の瑞稀君と目が合わなくなった

突然俯いてしまった瑞稀君と無理に視線を合わせるように覗き込むと


「……」


その顔ってもしかして

拗ねてる……?


むすっとしたような顔をしていた


「瑞稀君?」
「やっぱり反対すればよかった。執事喫茶なんて」


小さな声でそう言う瑞稀君を見て、俺は必死で表情筋を引き締める


だめだめ
ニヤけたりしちゃだめ

ヤキモチ妬かれてるのが嬉しいなんて
瑞稀君に知られたら怒られそう


「みんなに、見られてて……」


瑞稀君の言葉に続く言葉を想像して、俺は胸が痛むのを感じた

痛みに耐えきれずぎゅっと強く抱きしめる


「俺は全部、瑞稀君のものだよ」
「……っ」


だって、俺が小川さんに感じたのと同じ感情だって思ったから


瑞稀君は俺の
俺は瑞稀君の

それだけでいいよね
他の人とか、全然入ってこれなくていい


その思いが同じで
すごく嬉しい


「髪の毛1本から、足の爪の先まで、全部」
「全部?」
「うん。この、胸の音も」

ドキドキする心臓の音を聞かせるように瑞稀君の頭を俺の胸に押し付ける

ストーリーメニュー

TOPTOPへ