誰も見ないで
第14章 文化祭
「待ちなさいよ!!!」
という後ろからの怒鳴るような声
反射的に振り返ろうとすると、視界の端で何かが動いたのが見えて
「……っ」
俺はとっさに瑞稀君を腕の中に入れた
するとその直後バシャ、と耳元で大きな音がしたかと思えば俺の背中に冷たい感触
髪の毛や肩にまで飛んだ液状のそれを見ると、水……なんてものじゃない人工的な青い色をしていた
ペンキ……?
そう理解してから小川さんの方を見ると、小川さんの手には準備で使ったものらしきペンキの缶がある
遅れて鼻の奥を刺激するシンナーの臭いに晒されて息がしづらい
垂れそうになるペンキから瑞稀君を守るために腕の中から解放すると、ギリギリかかってなかったみたいだ
よかった
「湊斗君!!!」
「大丈夫だから、近づくと瑞稀君まで汚れちゃうよ」
心配そうに俺に近づこうとする瑞稀君を手で制して、俺は改めて小川さんへ視線を送る
何のためにこんなこと
すると小川さんは心底俺を馬鹿にしたように笑う
「ざまぁみろ! 私のこと馬鹿にするからそうなるんだよ!!」
馬鹿に、なんて
した記憶ないけど
昨日の話のどこをそう思ったんだ