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誰も見ないで

第14章 文化祭


そう反論したかったけど、俺の頭は強いシンナーの臭いにやられてぼーっとしてしまってロクに動かない


「気持ちわるいんだよ!!!お前ら!!!」


そう叫ぶ小川さんの顔を見ながら


あれ


と思った


なんでそんな、悲しそうな顔をしてるんだろ


泣いてるんじゃないかって錯覚するくらい、小川さんの顔は悲しげに歪んでいる


その顔をちゃんと見ようとした
けど

次の瞬間小川さんの顔は目の前にやってきたもので遮られて見えなくなってしまう


なに?


なんて思ったのと、俺の目の前を遮った正体がわかったのはほとんど同時



「瑞稀君……?」


俺を庇うように目の前に立った瑞稀君が小川さんの方を見据えて立っている


「やめて」


強い口調でそう伝えた瑞稀君の顔は見えないけど、握った手に力が入っているのはわかった


「これ以上湊斗君に何かするなら許さない」
「……っ」


瑞稀君からこんな声が出るのか、と俺でも驚くほど低くて心の底から怒っている瑞稀君に小川さんも少しだけたじろぐ

でも小川さんにも引けない感情があったのか


「うるさい。あんたになにがわかるの」


と、負けずに低い声で返ってきた

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