誰も見ないで
第14章 文化祭
なんだか口を挟めない雰囲気に、俺はただじっとしているだけ
「わかるよ」
「っ適当なこと言うな!」
「……言っていいの?」
瑞稀君の静かな怒りの乗った声は、まっすぐに小川さんへと届いて
その言葉が嘘じゃないのかもしれない、と思わせる
瑞稀君
何を知ってるの……?
「…………」
何も言わなくなった小川さんに、瑞稀君は静かに語りかける
そして紡がれた言葉に、俺は自分の耳を疑った
「小川さん、湊斗君の事が好きなんでしょ?」
え?
小川さんが俺のこと
好き?
なに、それ
「はぁ? なに言ってんの、馬鹿じゃない?」
顔の見えない小川さんもそう言って瑞稀君を煽る
「それならなんでわざわざあんたのこと好きなフリしなきゃいけないのよ。私が木下の方やった方がいいじゃない」
確かに
小川さんの言う通りだ
流石に今回のこれで小川さんが俺のことを好きなんてことはないと思う
けど、瑞稀君は何故か自信ありげ
「ばっかじゃないの。それとも逆に私がそんなこと考える奴だって馬鹿にしてんの?」
小川さんの上履きが瑞稀君の脚の間から見えて、近づいてきたのがわかった