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誰も見ないで

第14章 文化祭


俺は目の前にきた瑞稀君を引き寄せて

強く抱き締めた


「……っ」
「! 湊斗く……?」


俺が泣いてるからなのか
突然抱き締めたからなのか

すごく驚いて固まっている様子の瑞稀君


小さくて柔らかい

その瑞稀君に俺は
自分の中に渦巻いている怒りをぶつけるように吐き出した


「あるよ……っ」
「……え……?」
「俺が瑞稀君を好きでいる理由なんて、数えきれないほどあるに決まってるでしょ……!!!!」
「!」


さっきのあの言葉
撤回するまで絶対許さない


『僕が湊斗君に好きでいてもらう理由が何にもなくたって、絶対僕は湊斗君を誰かに渡したりしない』


なんて

こんなに好きなのに
そんなの酷すぎる


瑞稀君の手がゆっくり俺の背中へと回って、瑞稀君なりの精一杯の力で抱きしめ返してくれた


「……っ」


ズ、と小さく鼻をすすった音が聞こえて、着ていた体操服の肩口がじんわりと温かくなる

それが瑞稀君の涙の温かさだと気がついて、慰めるように俺が頬擦りすると


「……うん……ごめん……ありがと……」


と涙声で言われた


「大好きだよ瑞稀君、全部……全部、大好き……」

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