誰も見ないで
第14章 文化祭
俺が茶化すつもりでそんなことを言うと
「そうですね」
と瑞稀君が漸く笑顔になってくれて、ほっと胸を撫で下ろした
「ね、瑞稀君こっち」
「?」
でもこのまま教室に戻るのはなんか勿体無い気がして、俺は廊下の端っこの柱で死角になって見えない一角に瑞稀君を連れ込んだ
狭いそのスペースの中から出ないように、俺は瑞稀君を引き寄せて抱き締める
「俺には瑞稀君だけいればいいよ。これまでも、これからも、ずっとずっと大好き」
腕の中で固まっていた瑞稀君が顔を上げる
その顔があんまりにも可愛いからちゅ、と触れるだけのキスをした
「ここ、廊下……」
「ごめん。でも、我慢できなかった」
俺が謝ると瑞稀君は照れたように笑って
「実は僕も、してほしかった」
と、今度は俺の唇に瑞稀君からキスをしてくれた
忙しかった文化祭が終わってみんなが片付けに翻弄する中
当然こんなところじゃ、いつかその片付け中の人に見られてしまう
けどもう少しだけ瑞稀君と一緒にいたいから
戻ったらちゃんと片付け手伝うって約束するから
この小さなスペースで、瑞稀君と2人きりの時間を堪能させて欲しい
俺はそう願いながら、瑞稀君をもう少し俺の方へと引き寄せた