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誰も見ないで

第16章 全部知りたいのに


「だって、そう言えるってことは瑞稀君と湊斗が喧嘩してもうまくいってるってことだと思うし、そうやってちゃんと考えてくれる恋人がいるのって幸せだよ」


そう言われたところで、何か反応を返すよりも前に先生が入ってきてしまった


「ほら座れー」
「先生来ちゃったね。じゃあまた」


そう言って正樹君は自分の席へと戻って行った

そして空いたそこへどこかで友達と話していたらしい本当のその席の人も帰ってきて、新しい担任の先生が今日の流れを説明し始める


これから体育館で始業式
それからプリントをいくつか配って、その説明を少し

今日は特に決めることもないから、それだけで終わり


でも、先生がそんな説明をしている間僕の頭の中は正樹君に言われたことでいっぱいで


ちゃんと考えてくれる恋人がいるのは幸せ


何気なく一緒にいるんじゃなくて
お互いのことを思い合える存在がいる

それが幸せってこと?


じんわりと胸が温かくなった気がして
僕は口元が綻んでしまうのを意識的に止めた


幸せ


湊斗君も
僕のことちゃんと考えてくれてるのかな

きっとそうだよね


僕は教室で見ることの出来なくなってしまった恋人の姿を思った

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