誰も見ないで
第16章 全部知りたいのに
ちょっと近づきにくい……かも……?
少しだけ歩くスピードが落ちてしまって
それでもあんまり長い時間待たせるわけにはいかないしって心の中で葛藤した
そして、湊斗君の姿が見えるところまでたどり着くと
「瑞稀君!」
きっと周りの女の子達なんて目に入っていないんだろう湊斗君が、僕だけを見て笑った
「……っ」
逃げ出したいぐらい恥ずかしくて
でも、湊斗君が見えるようになってすぐに僕に気がついてくれたことが嬉しくて
僕はとりあえず小走りで湊斗君に駆け寄った
そして
「? みずきく……え、」
湊斗君の腕をぐいぐい引っ張りながら歩き出す
後ろの方から僕への非難なわけではないけど、残念そうな声が聞こえた
けどだめ
もうあんまり湊斗君の笑顔とか
見て欲しくないから
そういえばもうすぐ新入生が入ってくるから、こういうの増えるんだろうな
嫌なことを思い出してしまってちょっと憂鬱
「瑞稀君?」
人気のなくなったところで歩みを緩めると、湊斗君が伺うように僕を見た
「何か……怒ってる……?」
心配そうな顔を見せる湊斗君に、胸がきゅんと締まった