誰も見ないで
第16章 全部知りたいのに
怒ってないよ
拗ねてただけ
ごめんね
って、そう言ってあげたかったはずなのに
こんなに可愛く見つてめられると僕の心は何でか意地悪になって
「……」
何も答えずに黙って歩いた
湊斗君がショックを受けてるのが伝わってくる
先に歩き出した僕に追いつくのは、きっと湊斗君の脚の長さなら余裕なはずなのに
「み、瑞稀君……っ」
小さい子が小走りで追いついてくるように錯覚するのはどうしてなんだろう
そんな状態のまま家に帰って
僕が先に靴を脱いで家に上がる
それに続いて靴を脱ごうとした湊斗君の後ろで扉が閉まったことを確認してから
「わっ……!?」
屈もうとした湊斗君を阻止するように、その胸に飛び込んだ
勢いが良すぎたせいで、湊斗君の背中が扉にとん、と着いて壁際に追い詰めたみたいになってしまう
それでも構わずにぎゅう、と抱き締めると
ゆっくりと湊斗君の手も僕の背中に回ってきた
「瑞稀君……?」
放課後に会ってから、僕の名前を呼ぶのしか聞いてない気がする
けど、湊斗君に名前呼ばれるのすごく心地いい
「意地悪してごめんなさい」
素直に謝ると、少しの間が空く