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誰も見ないで

第16章 全部知りたいのに


「こっち来て」


僕は呼ばれるまま側に行って、湊斗君の隣に座った

すると湊斗君に話して、と言われてるように手を握られる

僕はその手をちょっと眺めて、小さく握り返した


離さないって決意を込めて


「湊斗君、あのね……」
「うん」


湊斗君は穏やかな声音で返事を返してくれる

僕は湊斗君の目を見つめて


「湊斗君が海外に行くって、本当?」


シンプルに
聞きたいことだけを

言葉にして伝えた


澄んだ瞳を嘘で濁らせることがないか
じっと見つめて

湊斗君の返事を待つ


「……っ」


湊斗君は一瞬驚いたような顔をした


なんで知ってるのか
って、そんな顔だった


氷の塊が胸に飛んできて
僕の心を砕いたような感覚に陥る

痛くて
冷たい


傷がついてじんわりと血が滲むみたいに冷たさは広まって
全身を支配して行く


本当、なんだ


確信に近いそんな感情が生まれて
僕は息が出来ていなかったことに気がつく


こんなに
ちゃんと意識してないと呼吸も出来ないぐらいに
苦しい


湊斗君は何かを迷っているようで
それでも何か僕に伝えようとしていて

ちゃんと聞きたい

そう思うのに

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