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誰も見ないで

第16章 全部知りたいのに


そんな僕の耳元で囁くように
でも、ちゃんと伝わるようにはっきりと湊斗君は言った


「ちゃんと、言わなきゃってずっと思ってたんだ。でも……なかなか言えなくて……」


ごめん、とまた湊斗君は謝った


けどその時僕の頭は、何か違うって思ってた


何で
謝られる度に、なんで胸が痛むの


「…………俺、母さん達のいる国で大学に行く」


そう言われて理由がわかった


僕は湊斗君と離れ離れになるのは怖いけど
湊斗君がした選択を否定したいわけじゃないんだ

むしろ

湊斗君が望んだ方向へと向かうなら喜ばしいとすら思ってる


それでも離れることが
全身をバラバラに砕かれたみたいにつらくて
涙が出るんだ


「……うん」


僕が頷くと、その衝撃でまた涙が頬を伝って湊斗君の服に吸い込まれて行った


「けど……これは、俺のただの我が儘なんだけど……」


そう前置きして湊斗君は何か躊躇っているように口を止めた

そして


「待ってて……欲しい……」


紡がれた次の言葉は
涙で震えていた


待ってて、欲しい


僕の頭の中で湊斗君の言葉が文字として浮かんで
それから遅れて


「いいの……?」


口から言葉が溢れた

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