誰も見ないで
第16章 全部知りたいのに
「4年間も待つの、大変だと思う。でも……俺、ちゃんと瑞稀君に相応しい人間になりたいんだ。その為に必要な知識や資格を、全部ちゃんと取ってくるから」
だから
と続ける湊斗君が僕と一緒に泣いてる
肩が熱いのは
湊斗君の涙なんじゃないだろうか
「僕、待っててもいいの? 湊斗君のこと……」
これまで離れ離れになることを考えすぎて
待ってるなんてこと考えてもみなかった
湊斗君は、帰ってくるつもりなんだ
僕のところに
「待っててくれなきゃ、嫌だ……」
子供が駄々をこねるみたいにぎゅう、と抱き締められたことが、さっきみたいにバラバラになる感覚じゃなくてぎゅっと固められる感覚だと思った
気持ちが違うだけでこんなに違うんだ
僕が湊斗君の中にちゃんといる
湊斗君がちゃんと、僕を僕にしてくれてる
「待ってていいなら……いくらでも待つよ……僕、湊斗君じゃなきゃ、だめだよ……」
湊斗君じゃなきゃ
嫌だ
「俺も、瑞稀君じゃなきゃ、だめ……」
湊斗君はそう言うと少しだけ身体を離した
キスするんだって思って顔を合わせると
湊斗君の顔は涙で濡れてて
嬉しい、なんて思った