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誰も見ないで

第17章 決断

渡辺湊斗視点


『湊斗、そろそろ進路を決めなきゃいけない時期じゃない? どうするの?』


そんなことを言われたのは、学校で進路希望調査票が配られる少し前のこと


「え……」


久しぶりに電話した母さんに突然そんなことを言われて、俺は固まった


進路


全く考えてもいなかった高校を卒業した後のこと


『早めに決めておかないと。湊斗の人生なんだから、ちゃんと考えなさいよ』
「う、うん……」


進路

進学か就職か?

今のところ、というか
今まで普通に進学しようと思ってたけど

じゃあどこの大学に?
なんの勉強をしに?


あと、瑞稀君は……?
どうするんだろう


同じ大学の方がいいな
でも勉強したいことが同じとは限らないし

俺に合わせても瑞稀君に合わせても、どっちかが遠慮しちゃうんじゃだめだし


いやでもその前に自分の進路も決まってないのに


いろんな考えがぐるぐる回って、電話中なのに何も話さなくなってしまう

黙り込んだ俺に、母さんは静かに話しかけてきた


「ねぇ湊斗」
「……ん、あ、ごめん。なに?」


一旦考えるのをやめて電話から聞こえる母さんの声に耳を澄ます

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