誰も見ないで
第17章 決断
すると母さんは
「あなた、こっちの大学に来る気はない?」
と言った
「え……」
進路のことを聞かれた時よりもずっと大きな衝撃に、足元が揺れたような気すらした
「いや、え……それは……だって……」
動揺しすぎて上手く言葉が出てこない
だって、瑞稀君が
置いていけない
というか、離れたくない
俺が
そんな気持ちを察したのか、母さんは瑞稀君と離れがたい気持ちもわかるわ、といった
『でもね、湊斗。日本ではまだ同性愛者に対する偏見が拭いきれていない部分があるでしょう?』
胸がぐっと詰まる
偏見か
確かに、そうだ
『その中で湊斗達が大人になってからも一緒にいるためにはなにが必要かわかる?』
母さんの言い方は少し厳しいけど
俺たちのことを考えてくれてるんだってことは伝わってくる
瑞稀君とこれからも一緒にいたい
そのためにはなにが必要なんだろう
「……わからない」
『誰にも文句を言わせない立場よ』
「……っ」
『そしてそれを手に入れるための知識や技術、資格……色んなものを持つ必要があるわ』
胸が詰まりすぎて
息がしづらい
『自分の考えを通そうとするなら、それだけの努力や決断をしなくちゃいけないの』