誰も見ないで
第2章 嫉妬
「君の記憶は鶏以下だ」
「トリ……」
頭の中で鶏が鳴き叫ぶ
「湊斗は、どうして紺野君と今一緒にいるのか覚えてないの?」
「なんで、俺と紺野君が一緒にいるのか……?」
正樹にまっすぐ目を見つめられて、やばい怒ってるって心の中で焦る
必死でここ数日の記憶を頭から引っ張り出して並べた
ヤキモチのこととか、お弁当のこととか、笑った顔のかわいいこととかたくさん思い出して
そして最後に
『好きです!!! 付き合って下さい!!!』
って言われた言葉が頭の中に蘇った
「え……っ、あれ……?」
「思い出した?」
「思い出し、た……? 俺、紺野君に告白、された……」
正樹が呆れ切ったように「やっぱり」と言った
「なんかおかしいと思ったんだよ。湊斗が最近紺野君のこと話す時、恋人になったってこと忘れてるみたいな感じだったから」
「気づいてたなら言ってよ……」
意地悪だ、と文句を言うと正樹にデコピンされる
「甘えるな。それに、大事なことなんだから忘れてるなんて普通思わないだろ」
「……痛い」
「紺野君が可哀想な分」
なんで正樹が紺野君の分を俺にデコピンするの
それに紺野君もっと優しいもん