誰も見ないで
第18章 最後の
その手を優しく取りながら座ると
「……っ」
瑞稀君は恥ずかしそうに視線を俯かせた
白くて細い指を俺の指でなぞって
柔らかい手のひらを撫でる
「今日、楽しかった?」
俺がふとそう聞くと、瑞稀君はパッと顔を上げて
「うん! 楽しかった」
と答えてくれる
「俺も、楽しかった。学校行事だから色々と縛りはあったけど、それでも楽しかった」
俺もそう返すと、瑞稀君は嬉しそうに俺の手を握り返してくれた
そして
「また来ようね」
と言うと、握られた手に僅かに力が入った
「…………うん」
どういう意味かちゃんと伝わったのかな
また今度、とか簡単には言えないもんね
これから瑞稀君も俺も忙しくて
その忙しさが過ぎ去っても、俺たちは一緒にはいられない
来れるとしたら、4年後?
うわ、なにそれ
遠すぎる
静かに上へと向かう観覧車の中で
「……」
「……」
俺たちは沈黙したまま
景色はもう大分遠くまで見渡せるようになってきた
もうすぐ頂上かもしれない
と、そこで瑞稀君が何か言いたそうにしているのに気づく
「?」
「……っあ、あの、ね……」