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誰も見ないで

第18章 最後の


うろうろと視線を彷徨わせて
手も何やらもじもじ動いてて

そして、最後に

顔を上げて俺としっかり目を合わせた


「これからお互いに忙しくて、きっと暇になった頃には湊斗君は海外に行かなくちゃいけなくて……だからゆっくり出来る間も無く離れ離れの4年間が始まっちゃうんだろうって思う」
「……うん」
「……だから……」


瑞稀君の不安だって気持ちが俺の心の中に流れ込んできて、息が吸いづらい


俺と同じ

俺と同じように不安で
俺と同じように、伝えることを躊躇ってたんだ



瑞稀君に海外に進学するって伝えたあの日


『ねぇ瑞稀君……』
『なぁに?』


不安だって、言えなかった
俺も


「だからね、こんな本当かどうかもわからないジンクスに頼ってでもいいから、湊斗君とこれからもずっと一緒にいられるって……信じたい……」


泣きそうな顔をした瑞稀君の
膝の上で握った手を解くように優しく掬って

包み込むように握った


観覧車は頂上付近に小さく音楽が流されているっていうのは、アトラクションの説明欄に載ってたっけ

それってこの音楽のこと?

遊園地側もジンクスのこと、知ってるからなのかな

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