誰も見ないで
第18章 最後の
俺は小さく聞こえていた音楽が自分の鼓動に掻き消されて聞こえなくなっていくのを感じながら、瑞稀君にそっと近づいて
「……」
「……」
静かに唇を合わせた
離れてみると、観覧車の進行方向から聞こえてきていた音楽はいつの間にか後ろから聞こえるようになっている
ちゃんと頂上でキス出来たかな
瑞稀君の頬をするりと手で撫でると
「……っ」
「え……」
瑞稀君が涙を流していた
「……あり、がど……」
けどすぐにその涙が、嬉し涙だってわかって
俺は瑞稀君をきゅ、と抱き寄せた
隣に座ってる状態だとちゃんとくっつけないのがもどかしい
もっとちゃんとぎゅってしたいのに
耳元に寄せられる顔が、涙で濡れてる
俺は瑞稀君の首筋に顔を埋めた
「……不安だよ、俺も」
そして、言えなかった本音をぽつりと呟く
「……え……」
「俺も、瑞稀君と同じように不安だよ」
離れ離れになってしまうまでの
一緒にいられる時間
その時間を全部瑞稀君と過ごせるわけじゃないのが
不安だし
不満だし
「だから俺も、こんな信憑性の低いジンクスに縋ってでも一緒にいたいって思う」