誰も見ないで
第19章 誰も見ないで
体感としては、高校生活最後の遠足があってから後は1ヶ月ぐらいしか経ってないんじゃないかって思えるほど短かった
高校からの推薦と、俺の作文が評価されて
あっさりと俺の渡航が決まり
瑞稀君も、自分の希望していた大学の推薦枠を取れた
お互いの進路がすんなり決まったことは有り難かったけれど、俺の荷物や必要書類の準備で結構バタバタしてしまった
そして
『湊斗、忘れ物ない? 後から送ってもらうのは高くつくんだから、ちゃんとしなさいよ』
「わかってるよ」
あっちで寮に入る関係で、日本での卒業式に出られない時期に俺はもうあっちに移ることになった
瑞稀君と一緒に卒業式、出たかったなぁ
実際の入学は9月からになりそうだけど、それまでに少しずつ慣れておきなさいと大学側からも言われてしまったから仕方ない
『じゃ、しっかり準備しとくのよ』
「はーい。じゃあね」
通話を切ると、近くに座っていた瑞稀君がクスクスわらった
「笑わないでよ瑞稀君」
「ごめんね……でも、ふふ……っ、なんかかわいくて」
かわいい?
今の会話のどこが?
普通の親子だけど
「荷造りは終わりそう?」
「うん。出発日までには余裕で終わると思う」