誰も見ないで
第19章 誰も見ないで
「今日、大和君たち何時に来るんだっけ?」
瑞稀君が時計を見ながらそんなことを聞いてきた
「お昼過ぎって言ってたから、あと2時間ぐらいかなぁ」
今日はというと
正樹と先輩が、俺の門出を祝うために家に来てくれるらしい
本当は正樹だけって話だったんだけど
いつのまにか先輩もって話になってた
俺が海外に行くって知った時の先輩の怖さは、きっと暫く忘れられない
海外にじゃなくて、天に旅立つかと思った
「そろそろ準備する?」
「んー……」
俺も時計を見ながら頭の中で時間を計算する
そして
「もうすこし」
「わっ……」
まだ大丈夫、という結論に至って
隣の瑞稀君に少し寄りかかった
俺よりも随分身体が小さい瑞稀君は少しよろけたけど、すぐに立て直して俺を支えてくれる
下に置かれていた手を指でトントン、と叩くと手のひらが上を向いて
嬉しい
自然と手を繋いだ
ふわっと香るシャンプーの香りにちょっとドキドキする
俺も同じの使ってる筈なのになんでこんなに違うんだろう
汗とか、そういう匂いが混ざってるからなのかな
だとしたら俺がドキドキしてるのはシャンプーにじゃなくて瑞稀君にってことだね