誰も見ないで
第19章 誰も見ないで
「うわぁ。こんなに用意して貰ってごめんね。俺たちがお祝いするんだから、俺たちがもっと持って来たらよかったなぁ」
「瑞稀は料理上手いから、いいだろ別に」
「あっ、こら、つまみ食いするな」
用意してあった料理をひょい、とつまんで食べた先輩を正樹が注意している貴重な場面に、瑞稀君とこっそり視線を合わせて笑う
「それより渡すもんあんだろ」
「あ、そうだった。はいこれ、デザートにと思って」
「わぁ、ありがとうございます!」
瑞稀君の顔がパッと明るくなる
正樹が渡した箱は駅の向こう側にある小さいけど有名なケーキ屋さんの箱だ
瑞稀君前に食べてみたいって言ってたもんね
普段は並んでてなかなか行けないから
あんなところまで行ってくれたから、駅から先輩と一緒に来たのか
妙に納得しつつ瑞稀君の手からひょい、と取ったケーキを冷蔵庫に入れに行く
すると2人に
「座ってて下さいね」
と声をかけた瑞稀君が俺を追って台所にやってきた
「ケーキぐらい持てるのに」
「ん、ごめん?」
「湊斗君のお祝いなんだから、主役がいなきゃでしょ?」
拗ねてるみたいな瑞稀君
俺が輪の外にいたのが不満なのかな