誰も見ないで
第19章 誰も見ないで
俺はまだ少し不満げな瑞稀君を抱き締めたい衝動をどうにか抑えて
頬を撫でた
「うん。ごめんね、ありがと」
そう言うと、不満げな瞳が俺を見て
仕方ないな、というように笑った
「でも俺、みんなが話してるのを見てるのが好きだから、楽しいよ」
「僕は湊斗君も一緒に話してくれた方が楽しいな」
む、上手いな瑞稀君
そんなこと言われたらじゃあ会話に入らなきゃいけないなってなっちゃうよ
「ん、わかった」
頬を撫でていた手を髪に移動して
撫でると、瑞稀君の目が気持ちよさそうに細められる
「これ持ってくね」
けど、このままキスして
なんてこと正樹達もいるこの状況で出来る訳もなく
瑞稀君は取り皿を持って戻ってしまった
いなかったら、なんて
せっかく来てくれた2人に失礼すぎること考えちゃった
ごめん、と心の中で謝りつつ、ケーキを冷蔵庫に仕舞う
そして俺は昂りかけた気持ちを深呼吸して落ち着かせてから、3人の元へと戻った
「遅いよ湊斗」
「ごめん」
「はい、湊斗君飲み物」
「ありがとう」
「瑞稀、手元気をつけろ。コップ倒しそうになってたぞ」
「ほんとだ。ありがとう」