誰も見ないで
第19章 誰も見ないで
どんなに願っても、時間は止まってくれることはなくて
あと少ししかないと思っていた瑞稀君との時間は無情にもどんどん短くなった
そして
とうとう俺が旅立つ日になってしまった
先に荷物を送っていたおかげで、俺の荷物はスーツケース1つだけ
空港でそれをカラカラ引きながら
「……」
「……」
瑞稀君と2人
黙って歩いた
地元の駅では正樹と先輩が見送りに来てくれて
「元気で。必ずまた会おうね」
「じゃあな。瑞稀のことはまぁ、ある程度任せろ」
と声を掛けてくれた
長い付き合いの正樹は、なんだか目の周りが赤くて
「ごめん、正樹。正樹に相談しないで勝手に決めて」
ずっと気になっていたことを謝罪したら
突然俯いてしまって
「あー……ったく」
先輩からガシガシ頭を撫でられていた
「俺は湊斗がどこで何してたって、必ず応援してるよ。だって、湊斗もそうでしょ?」
涙で掠れた声でそう言われて、そんなつもりなかったのに鼻がツンと痛くなった
ここで泣いたらきっと
あっちに着くまで涙止まらないな
ゆっくり深呼吸して
涙を乾かすように瞬きを我慢する
「当たり前だよ。この世でたった1人の幼馴染なんだから」