誰も見ないで
第19章 誰も見ないで
俺がそう言うと、正樹は笑ってくれて
「そこだけは、瑞稀君にも負けないな」
なんてことを言った
瑞稀君は目を潤ませながら
「羨ましいです」
と笑ってた
唯一で大切な幼馴染と暫くの別れを惜しんで
今度は
世界で1番大事な恋人と、別れなきゃいけない
飛行機の入場開始まで、あと少しだ
あんまり人目につかないような隅の隅
並んで立つ隣の瑞稀君は、ずっと俯いて手を弄んでいる
俺はその手を取った
「湊斗君……」
俺の方を見上げた瑞稀君の顔は
今にも泣きそうな……というよりも、ずっとずっと泣いて来たみたいな顔をしている
「そんな顔しないで。行きたくなくなっちゃう」
「……っ」
手を繋いだのと逆の手で頬を撫でると、瑞稀君は息が詰まったように苦しそうな顔をした
ごめん
「……いかないで……」
呟くように口から出て来た言葉は、きっとずっと瑞稀君が飲み込んで来たものだろう
我慢させて、ごめん
側にいられなくて、ごめん
俺は人目も気にせずに、瑞稀君を抱き締めた
こんな小さい身体で、辛いことさせてごめん
「…………ごめん」
心の中の謝罪は、とうとう口をついて出て行く