
誰も見ないで
第20章 誰も見せない
俺の言葉を聞いて、友人はこれ見よがしに大きくため息を吐いた
「ほんと、日本にいるミナトの幼馴染の苦労が伺えるよ」
正樹の?
なんでだろ
「まぁいいや。とりあえず俺は最後にミナトと話したかっただけだから、そろそろ行く。荷造りの邪魔しても悪いし」
「あぁ、うん。ごめん。わざわざありがとう」
「俺が話したかったって言っただろ。じゃあ、また明日」
「また明日」
部屋から人がいなくなって、突然しんと静まりかえる
明日出る前に必要なもの以外は全部しまったから、もうほとんど俺の私物は残ってない
来た時と同じような、無機質な部屋になって
少しだけ寂しいって思った
そのことに、さっき言われた第二の故郷、という単語が浮かんで来て
日本を出る時はちょっと行って帰る、ぐらいの気持ちだったけど
こんなに愛着が湧くと思わなかったな
いつか、瑞稀君とも一緒に来よう
行きたいところたくさんあるし
「って、そろそろ時間だ。行かなきゃ」
荷造りを終えられて良かった、と思いながら俺は急いで外出の準備をする
バタバタしながら部屋を出て、繁華街へと向かう
すると
「湊斗!こっち!」
遠くから俺を呼ぶ声
