誰も見ないで
第20章 誰も見せない
「ごめん、待たせて」
「そんなに待ってないから、気にしなくていいよ」
手を振って近づいて来たのは、母さんと父さん
「それより湊斗頭ボサボサじゃない。直してあげるから、こっち来なさい」
「ん……ありがと」
手櫛で髪を整えて貰って、ようやく2人と向き合う
「お店は予約してあるから、行こうか」
「予約してくれたんだ?」
「湊斗は初めて行くところだけど、私達はよく行くところなのよ」
「へー」
のんびり歩きながら、あれが美味しくてね、これもオススメでね、と言い続ける母さんの話を聞く
父さんも笑いながら一緒に聞いてて、久しぶりの親子水入らずの時間に気分が上がった
お店に入って予約していた席に案内してもらって座ると、母さんが俺の方をじっと見ていた
「? なに? 料理注文しないの?」
「料理はコースだから、心配いらないよ」
俺の質問には父さんが答える
そして父さんは、母さんの背中をそっと撫でた
ぴく、と反応した母さんは意を決したように口を開く
「湊斗、ごめんなさい」
母さんが、テーブルに着きそうなほど深く頭を下げた
「……え……?」
なんで、謝るの