誰も見ないで
第20章 誰も見せない
笑いかけると、母さんも漸く笑ってくれて
家族3人久しぶりで、暫くなさそうな食事会は笑顔で終われそうだと思った
美味しいご飯をこれまでの大学生活とか、母さんたちの話とかを聞きながら食べて
帰る時間まではあっという間だった
寮の前まで見送りに来てくれた2人が、俺を見て少し申し訳なさそうな顔をする
「ごめんなさい、湊斗。明日見送れなくて」
「仕事なんでしょ? 仕方ないよ」
「……湊斗は昔からそう言ってくれるな」
父さんの大きな手が俺の頭に乗っかる
「だって本当に気にしてないから。仕事してるかっこいい2人、大好きだよ」
それとほら
こうやって俺が笑うと笑い返してくれるところも
大好き
「ありがとう。明日、気をつけて」
「日本に着いたらちゃんと連絡するのよ」
「うん」
また帰って来てね、と約束して駅の方へと向かう2人が見えなくなるまで見送った
よし、帰ろう
帰って、荷造りを終わらせて早く寝てしまおう
後数時間しか眠れない
日本は今何時だっけ
瑞稀君は寝れたかな
もしかしたらメール来てるかもしれない
俺は浮かれる心を鎮めるのを諦めつつ、寮に最後の帰宅をした