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誰も見ないで

第20章 誰も見せない


息を切らせて汗をかきながらもどうにか会場に着くと、まだ『ご家族様席』の受付が開いている

誰のご家族ですかとか
受付票はとか
聞かれたら困る

と思っていたんだけど、流石に人数が人数だからか色んな人にじろじろ見られはしたが全く問題なく通れた

どの学部がどの席かっていう一覧を受付で貰って、ご家族様席に向かう


所謂アリーナ席にあたるところに集められた卒業生たちをぐるっと囲むように設置された客席は二階席からが全部家族用らしい

本当は最前列に行って瑞稀君を探したかったけど、席どころか通路まで人でいっぱいで近寄れない


うーん……ここから見ると結構遠く感じるなぁ
三階席行こうかな……


豆粒大の卒業生たちは、顔なんか認識できるはずもない

でも


「!」


うわ
俺すごい

いや、俺たちがすごいのかな


見つめた先で目が吸い寄せられるように動いたそこには、愛しい恋人の姿

にやけそうになる顔の下半分を手で覆って隠す


いた

久しぶり


涙が出そうになる、なんてものじゃなくて

その名前を精一杯叫んで
客席から飛び降りて
抱き締めたい

そんな風に考えるぐらい嬉しさが爆発したみたいに俺の心の中で広がっていた

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