誰も見ないで
第20章 誰も見せない
粛々と行われる卒業式
立ってお辞儀をして
また座って
そんな行動ひとつひとつすら愛おしくて
俺はそこから動くことなく、式の間中ずっと瑞稀君を見つめ続けた
やがて式が終わると、卒業証書を貰うために各学部がそれぞれの出口へと向かう
瑞稀君がどの出口に向かうかをちゃんと聞いて
どこかへ行ってしまわないように先回りする
午前の部の卒業生やその保護者、俺と同じように午後の部の卒業生を待つ保護者
色んな人で溢れかえるそこで、俺も瑞稀君を待つ
俺、浮かれてここまで来たけど
瑞稀君も友達と写真撮ったり、ここから打ち上げに行ったりするかな
いや、普通するよね
そしたら俺邪魔じゃない?
周りの人たちのキラキラした雰囲気と、大学生活を惜しむ姿に少し打ちのめされて不安になる
高校の時と違って話したりする友達できたって言ってたし
瑞稀君の楽しそうな話し声と共に、その時の嫉妬心までがじわっと蘇ってくる
でも一目でいいから会いたい
会って直接おめでとうって言いたい
それから友達とどこかに行くなら家で待ってたっていいから
生垣の近くでしゃがみこんで
今度は両手で顔全体を覆って息を吐く