誰も見ないで
第20章 誰も見せない
それをしっかり立ち上がって受け止めてるんだから、俺はなかなか素直じゃない
「湊斗君、湊斗君……湊斗君が、いる……」
卒業式では平然としてたくせに、なんで今そんなに涙をいっぱいに目に溜めてるの
「うん、俺ちゃんとここにいるよ」
ぎゅ、と抱き締められるその力の分
俺も抱き締め返す
他人の目なんて知らない
瑞稀君と俺の仲を邪魔するほどの価値もない
瑞稀君に顔を見せてって頭を撫でると
上げられた顔は涙でくしゃくしゃ
「卒業おめでとう」
「……っ、ありがとう」
せっかくスーツかわいいのに
俺のせいでごめん
嬉しい
世界で1番好きな人が
他の何もかもかなぐり捨てて、俺のところへ走って来てくれる
そんな状況を喜ばないわけない
さっきまでの不安だった心が満たされて、少し身体を離して話をしようと思って瑞稀君の肩に力を入れる
すると
「……っ」
俺の胸に顔を埋めたまま首を横にブンブン振って、また腕にぎゅう、と力が入った
なにこのかわいい生き物
「瑞稀君話してたお友達は? これから打ち上げとか、一緒にご飯食べに行ったりとかしなくていいの?」