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誰も見ないで

第3章 好き


「あっ……」


声を上げたのは俺


「どうかされましたか?」
「いや……なんでも、ない」


俺の視線の先にあるのは


昨日……正樹が買ってくれた漫画……


少女漫画の端、本棚の一角に「BLコーナー」と銘打たれて置いてある

そこの、平積み本


人気、なのかな


「? 渡辺君は少女漫画とかも読まれるんですか?」
「え、あ……」


見過ぎた?
けど、勘違いしてくれたみたい


「読む、かな……たまに……紺野君は?」
「僕もたまにですけど読みますよ」
「そうなんだ」


良かった
引かれたりしなくて

紺野君も読むんだ

まぁ、俺が読んでるのは少女漫画じゃないんだけど


ちょっと気まずさを感じながら次の棚へ移動

そうして結局小さな本屋さんを1回るのに時間以上かけてしまった


「随分長居しちゃったね」
「そうですね。お店の人には申し訳ないです」
「そうだね」


でも本屋さんって優しいよね

俺たちみたいな大した金額買ってないのに長居するお客さんにも優しいし

内心ではすごく嫌がられてるのかもしれないけど

でもそのおかげで
紺野君とたくさん話せたから、ほんとにありがたい


「重い? 持とうか」
「いえ、大丈夫です」

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