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誰も見ないで

第3章 好き


突然の俺の質問に驚きながらも返事をしてくれる紺野君

俺はそれを良いことに帰り道はずっと紺野君のことを聞き出し続けた



そして到着した紺野君の家の前


あっという間だったな
でもここまでで他に寄り道出来るところなかったし

もっと一緒にいたいけど、これが限界かな


「荷物持って頂いて、あと……家まで送って頂いてありがとうございました」
「ううん。俺がしたかっただけだから、気にしないで」


本を渡すと、心なしか紺野君も寂しそう

その表情を見ると切なくなるけど、同じ気持ちで嬉しくもなる


なんだか好きって複雑だ
色んな感情がまぜこぜになって、苦しい


「……」
「……」


夕暮れ時の住宅街でお互い黙り込んでしまった空気をどうにか払拭しようと俺は


「早く明日になるといいね」


と声を掛けた

すると紺野君の表情がぱっと明るくなる


「はい。僕もそう思います」


別れ際に笑った顔が見られてよかった


「それじゃあ、また明日ね」
「はい、また明日。気をつけて帰って下さいね」
「ありがと」


ばいばい、と手を振ると紺野君も振り返してくれる

けどそれが徐々に遠ざかっていくのがすごく寂しかった

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