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誰も見ないで

第1章 告白


なんだろ?


疑問を感じながらも綺麗な色のだし巻き卵を取って食べる


ちょっと甘めの、俺の好きな味


「どう、ですか?」
「すごく美味しい。料理上手なんだね」


素直な俺の褒め言葉に、心底ほっとしたように息を吐く紺野君


俺の反応に怯えてたの?

不味いって言われるかもって思ったのかな
そんなわけないのに


「紺野君は食べないの?」
「あ……はい、僕も頂きます」


俺が急かすと、紺野君は慌てて箸を持って食べようとした

……んだけど、慌てたせいで箸を落としてしまった


「あっ……!」
「あー……落ちちゃったね」


屋上だから当然落ちたところには風で巻き上げられた砂とかがあって、衛生的に綺麗とは言えない状況

紺野君はどうしよう、とシュンとしてしまった


どうして?
別に食べれるのに


「紺野君」
「はい? え……?」


俺の箸で摘んだものを口元に持っていくと、それを見た紺野君がフリーズする


「あーん」
「え、でも……」
「ん? 潔癖入ってるの? こういうの嫌な人?」
「いえ、そういうわけじゃ……」
「ならいいでしょ。それにこれ、もともと紺野君の箸なんだし」


ズイ、と出すとそのぶん仰け反って避けるから紺野君の体勢は結構キツそう

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