誰も見ないで
第3章 好き
「以前僕が箸を落としてしまった時に渡辺君がしてくれたじゃないですか」
いや、うん
したけど
でもその時とは俺も大分違うから
好きな人に差し出されたりしたらそれは照れる……ってあ、そうか
前の紺野君もこんな気持ちだったんだよね
「観念して下さい。体育の後にお昼ご飯抜きだと午後の授業でお腹鳴っちゃいますよ?」
追い討ちをかけるようにいつしか俺が言ったことと同じことを言われて俺は
「……ぅ、ぁ、あーー……」
渋々と口を開いた
「もう少し開かないと入りません」
「ん……」
意地悪にもそんなところまで真似されて恥ずかしくなりながらももう少し口を開くと
「いい子ですね」
と口の中にご飯を入れられる
大人しくもぐもぐ咀嚼してると、紺野君が嬉しそうに笑った
「ふふ、かわいい」
「!」
いや紺野君のその笑顔の方がかわいいよ
って思ったけど、そーいえばあの時は俺はかわいいって言うの我慢したのに!
恥ずかしいのとちょっと悔しいので無言で食べ続ける
でもそれも拗ねてるみたいで面白いのか
「ふふふ……」
紺野君がまた小さく笑った
「もー! 笑いすぎ!!」