誰も見ないで
第4章 真実と真実
「こんな天気なのに傘もささず何してんの!?」
そこにあったのは俺に傘を差す待ち焦がれた紺野君
ではなくて、正樹の姿だった
別にそんなことないんだけど、人と話すのがすごく久し振りな気がして気の抜けた笑顔が出る
「正樹……」
「いやまさきぃ、じゃないから。びっちょびちょで風邪引くよ!?」
「……んー……」
ぼんやり返事をしながら顔についた雫を払うと、正樹がハンカチで頭を拭いてくれる
「何してるの。こんなところで」
「……紺野君を、待ってた……」
「は!? こんなびちょびちょになりながら待つとか馬鹿じゃないの?」
「……」
何か喋ったら泣きそうなぐらいなんとなく不安定で俺が黙ると、正樹が溜息をついた
「……紺野君とは何時に待ち合わせだったの?」
「……11時」
「じゅっ……!? 今何時だと思って…………はぁ、もう……帰るよ、湊斗」
俺が首を横に振ると、正樹に腕を掴まれる
「……湊斗にとって紺野君との約束が大切なのはわかるけど、俺にとっては紺野君よりも幼馴染の方が大切だから。引きずってでも連れてく」
そう言った湊斗が無理やり俺を立たせて、文字通り引きずるように引っ張って連れて帰った