誰も見ないで
第4章 真実と真実
ところどころで歩いた記憶がなくなってるのは、俺がただ単に忘れただけなのかぼーっとしてたのかはわからない
けどとにかく俺は、気がついたら布団に寝かされていた
正樹がペチ、と叩いてるのと変わらないぐらいの勢いでおでこに触り
「やっぱり!」
と怒りながらどこかへ去って行った
正樹忙しそうだなぁ
当の俺はこんな風にぼんやり考えてて、お茶でも……とか思って動こうとしては正樹に「動くな!」って怒られた
「一回起きてこれに着替えて。で、これ薬。着替えたら飲んで」
「……ん……」
「食欲は? っていうか朝から何か食べたの?」
何にも食べてない、と首を横に振ると上からは大きなため息が落ちてくる
「何か胃に入れないと薬飲めないから、薬飲むのはちょっと待ってて。とにかく着替えたら寝てて」
言い終わるのが先か動くのが先か
バタバタ、と小走りで台所へ向かう正樹の背中を見送って「おかーさん」と頭でぼんやり考えて笑った
「……っ」
ぅあ、寒い
着替えよう
正樹が用意してくれた真冬にパジャマとして着てる分厚いスウェットを着て、今日着てた服を布団の横に置いた
濡れてずしっと重い服は絞ったらたくさん水が出てきそう