
誰も見ないで
第4章 真実と真実
でもその服が、紺野君とのデートのためにせっかく考えた奴なのになぁ、とか考えちゃって
泣きそう
ぐ、と我慢して目を逸らした
正樹の言われた通り布団に入って、体温の上がらない身体を小さく丸めていると
「お待たせ。食べられるだけでいいから、食べて」
正樹が1人用の土鍋に小さくお粥を作って持ってきてくれた
わぁ、たまご粥
黄色いのと白いのがふわふわ浮いてる
俺の家にある調味料を使ってるのになんでこんな嗅いだことのないいい匂いがするんだろう
「いただきます」
「どうぞ」
スプーンでひと口食べると、美味しそうな匂いに合った味がした
したけど
「……」
気持ち悪い
こんなに美味しいのに、全然食べれない
というか口に入れたひと口さえ飲み込めない
どうしよう、とぐるぐるしてると、正樹が俺の背中をさすってくれる
「ゆっくりでいいし、いくら残してもいいから食べられるだけ食べな」
「…………ごめん、正樹」
「謝らなくていいから」
正樹の優しさに切なくなりながらなんとか口の中の物を飲み込むと、胃の中がぽわっとあったかくなった
身体があったまるのは気持ちいいのに
ご飯は気持ち悪くて食べれない
