誰も見ないで
第4章 真実と真実
でもやっぱり食べないと
正樹のためにも
気力だけでご飯を口に運んで、それでも3分の1ぐらい食べたところで
「……ごめん」
俺はもう1度謝りながら机にスプーンを置いた
「いや、頑張って食べた方かな。偉いよ」
正樹は俺の食べた食器を見てふ、と笑いながらそう言って、頭まで撫でてくれる
「おかあさん……」
「そんな冗談まで言えるならすぐ治るよ。ほら、片付けやって来るから薬飲んで寝てろ」
「うん」
両親がいない時はいつもこうやって正樹が看てくれるんだよね
ほんと、ありがたい
俺は正樹に言われた通り最初に机に置かれた薬を飲んで、布団に横になった
いつもは何とも思わない布団がやけに冷たくて、ご飯であったまった身体の温度が下がっていく
すると片付けが終わったらしい正樹が戻ってきて、「はいこれと一緒に寝て」と湯たんぽを布団に入れてくれた
「あったかい……ありがとう……」
こんなのどこにしまってたっけ……
正樹の方が俺より俺んちのこと知ってるんじゃないかな
「じゃあ、俺は帰るから寝てろよ」
「うん。ありがとう」
「鍵はいつも通りポストから投げ込んどくから」