マリア
第8章 追奏曲
「あ、そ。」
和「俺んち来ます?ここから近いんで。」
「今から?」
和「あなたさえよかったら、ですけど。」
少し、躊躇う素振りを見せる俺を鼻で笑うと、二宮は俺の手を取った。
和「心配しなくても、俺、一人暮らしだから。」
二宮に手を引かれるままやって来たその場所は、見上げれば首が疲れるほどの高さがあるマンションだった。
呆けたように立ち尽くす俺を見て、二宮は、ほら、早く、と俺の手を引きマンションのエントランスをくぐった。
「おおよそ、高校生のガキには不釣り合いな場所じゃないか?」
和「言ったでしょ?俺の父親、デカい病院経営してる、って?」
二宮は フツーの一戸建ての広さほどある玄関に靴を脱ぎ、丁寧に靴を揃えて上がり込んだ。
和「どうぞ、上がって?」
と、目の前にスリッパを出されたが、スルーする。
和「一応、突き当たりがリビングなんですけど…」
と、言いながらも手前にある部屋のドアを開けた。
和「ここが俺の部屋。」
…何だよ?この広さ。
しかも、大きな窓際に置かれたベッドは、
ちょっと大袈裟かも知れないけど、
大人三人ぐらいは寝れそうな大きさだった。
その、ベッドサイドに、艶然と微笑む二宮が座って、自分の隣をぽんぽんと叩く。
和「ここ、座って『翔くん』?」