マリア
第8章 追奏曲
『翔くん』…?
和「どうしたの『翔くん』?早く『僕』の側に来て、隣に座ってよ?」
少し甘ったるく、鼻にかかったような声で二宮が誘う。
こいつ、智の口調まで…。
しかも、小首を傾げて笑いながらこちらを見る仕草まで…
…『智』だ。
じゃ、俺も『翔くん』にならないとな?
「ごめん。智くん。」
『智くん』な二宮の隣に座り、
『智くん』の頬に手を添えこちらに顔を向けさせた。
和「『翔くん』、さっき僕が言ったことは忘れて?」
「え…?」
和「もう、会わない、なんて、そんなこと『僕』に出来るワケないじゃん!?」
「に、二宮、お前…!?」
和「すごく後悔してる。言い過ぎた、って?」
「…どこから聞いてた?」
和「でも、礼音には言っておくね?『翔くん』が、もう会いたくない、って言ってた、って?」
「答えろよ!!どこから聞いてたんだ!!」
二宮は口の端をあげると、両腕を伸ばし、俺の頭を引き寄せ唇を重ねた。
和「どうして…怒るの?」
「聞かれたことにちゃんと答えないからだろ!」