マリア
第9章 傾想曲
和「兄貴、何だって?」
「え?あ…ゆっくりしてていいよ、って?」
和「ふーん?」
相変わらず、寝転がったまま、興味無さそうに返事をした。
和「ね、大野さん?悪いんだけど、さ、俺、急用ができちゃって…帰っていいかな?」
「え?」
和「俺の方から誘っといてアレなんだけど…」
せっかくだし、ゆっくりしてきなよ、とソファーから体を起こした。
和「んじゃ、兄貴をヨロシク。」
と、キッチンにいる先生に声もかけずに、二宮くんは帰ってしまった。
少ししてからキッチンから聞こえていた流水音が止み、先生がリビングに戻って来た。
潤「和也、帰ったの?」
「はい。よろしく言っといて、って?」
潤「そう…か。」
先生は大きくため息をついた。
「あの…僕…」
急に居づらくなって、カバンに手を伸ばしかけた時、先生が僕に笑いかけてきた。
潤「じゃあ、この間の話の続き、聞こうか?」
「続き……?」
潤「妹さんたちと気まずくなった、って相談してきたでしょ?」
「あの…それより…」
潤「どうしたの?」
「二宮くんとは…弟さんとは…どういった…。」
潤「和也『くん』がどうかした?」
瞬間、先生はしまった、という顔をした。