マリア
第9章 傾想曲
聞いていいものかどうか分からなかったけど…
「和也『くん』」。
確かに先生は二宮くんのことをそう呼んだのを聞き逃さなかった。
だから、先生が…
先生が、二宮くんのこと、本当はどう思っているのか、って、
お母さんの違う兄弟の存在をどう思っているのか?って。
先生が笑顔の裏側で、どんなことを考えてる人なのか、ってことを、
知りたくなった。
「さっき、二宮くんのこと…弟さんのこと、『和也くん』って言ってましたよね?」
潤「………。」
「二宮くんからは、先生とは、お母さんの違う兄弟だ、ってことは聞きました。」
潤「他は?」
「自分は、お父さんが、よそで作った子供なんだ、とも。」
潤「そう…。」
先生はテーブルに肘を付き、黙り込んでしまった。
が、ぽつり、呟くように口にした言葉に、僕は言葉を失った。
潤「人殺し、って…」
「え……」
潤「人殺し、って、あの子と初めて会った時、そう言われたんだ。」
「あの…それはどういう…」
潤「お前たちが僕のお母さんを殺したんだ、って?」