マリア
第2章 前奏曲
智「さっき、お隣の沖野さんが来て、自分でブレンドした、って言うお茶、分けてくれたんだ。」
礼「そ、そう?」
礼音は髪の乱れを直し、
俺は立ち上がって窓の景色を眺めるフリをした。
そんな俺たちの様子に我関せずと言った感じで、
智はお隣さんからもらったというお茶の講釈を始めた。
智「こっちが緑茶とラベンダー、で、そっちが緑茶とバラ。これが…なんだっけかなあ?」
と、舌を出す智の隣で礼音が笑う。
「ふーん…。」
ティーバッグの一つを手に取り鼻を近づける。
…ラベンダー臭、半端ねぇな。
顔をしかめる俺の側で、礼音の声が弾む。
礼「あ…ホントだ。ラベンダーの香りがする。」
智「で、こっちがバラ。」
礼「スゴいね?」
いつしか礼音の顔は、妖艶な女の顔から少女の顔に戻っていて、
こうして智と二人並んでいると、近所でも評判の双子の兄妹、と言うだけあってとても絵になっていた。
礼「ね、翔くんはどれにする?」
「え?」
智「翔くん、これ、飲んでみなよ?」
と、智は、何をブレンドしたのかはっきり分からない、というお茶を勧めてきた。
「………。」
…俺、緑茶だけの方が良かったわ。