マリア
第9章 傾想曲
和「痛っ…もー、乱暴だなぁ。」
肘を擦り、顔をしかめながら二宮は体を起こした。
「そんなことより、オマエ、いいこと、って何だよ!?」
和「ああ…」
くくくっ、とくぐもったような笑いの後、二宮は仰向けに横たわったままの俺の側近くで腹這いになり、
耳元で囁いた。
和「実は、今、この下にアナタの愛しい愛しい大野さんがいるんですよ?」
「えっ……!!な、何で!?」
慌てて飛び起きる俺を見て二宮は声をあげて笑った。
和「この下…ウチの兄貴の部屋なの。」
「てめぇ…」
和「しかも、二人っきりで、ね?」
唇を噛み締め、無言で睨み付けるしかない俺を嘲笑うかのように、二宮は喋り続けた。
和「アンタと俺がセックスしてる音が聞こえてなきゃいいですけどね?」
二宮は、段々と青ざめてゆく俺をさらに畳み掛ける。
和「あ…でも、もしかしたら聞こえてても、聞いてないかもね?」
「どういう意味だよ!?」
俺の側へとにじりより、さらに小さな声で囁いた。
和「あの二人も、今ごろ真っ最中かも知れないから…。」