マリア
第9章 傾想曲
「智くんがそんなことするわけないだろ!」
和「へぇ…そんなこと断言できる?」
「…どういう意味だよ!?」
和「大野さん、ウチの兄貴のこと気に入ってるみたいじゃない?もし、あんなイケメンに言い寄られたらイヤ、って言えないんじゃないの?」
思わず二宮のシャツの襟首を掴んだ。
「…オマエと一緒にするな。」
和「一緒ですよ。」
上目で俺を見ながら二宮は口元を歪めた。
「…違う。」
和「違いませんて?同じ人間だもの。アナタだって、大野さんのこと好きだ好きだ、って言ってても、俺を抱いてるじゃない?」
「違う、ってんだろ!!」
和「ま、いいけど、さ?」
俺の腕を振り払い、二宮は太ももを汚す白濁をティッシュで拭きながら奥へと消えてゆく。
そして、持ってきたバスタオルを俺に向かって放り投げた。
和「何、驚いてんの?シャワー貸したげる、ってんの!」
「え?」
呆けたように、バスタオルと二宮の顔を見比べている俺を見て舌打ちする。
和「あー、もうっ!!そんな汗だくのイカ臭い、きったないカラダで外出歩くつもり?」
と、床にまで零れ落ちた白濁を拭き取っていた。
「…じ、じゃあ、遠慮なく。」
和「後で俺も入りたいんで早くしてよ!?」
しっしっ、と、猫か犬でも追い払うように、
二宮は俺に向かって手をぶらぶらさせた。