マリア
第10章 夜想曲
潤「大野くん。ありがとう。今日は本当に楽しかった。」
わざわざ見送りなんて、と、言おうとしたら、
先生は今の今まで見せたことがないような、はにかんだ笑顔を見せてくれた。
潤「あの子の…和也くんのあんな無邪気にはしゃぐ姿が見れて嬉しかったよ。例え、あれが演技だったとしても…。」
先生の、見たことのない笑顔にちょっとドキドキしてしまった。
「僕は…別に…何も。あっ!!僕の方こそ楽しかったです。」
潤「ならよかった。また、遊びにおいで?」
「え…いいんですか?」
潤「もちろん。歓迎するよ?」
先生の大きくて綺麗な目が細められ、手が僕の頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。
潤「大野くん。君は不思議な子だね?」
「え?」
潤「君の持っている雰囲気かな?一緒にいると不思議と穏やかな気持ちになる。多分、和也くんもそうなんじゃないかな?」
「そう…なのかな?」
潤「そうだよ?」
どうしたのかな?
心臓の音がやたらとうるさく感じる。
潤「あれ?熱でもある?顔が赤いけど…」
「あっ……」
ピタリと額に置かれた先生の手のひらのせいでまた一段と熱が上がったような気がして、
思わず後ずさってしまった。