マリア
第10章 夜想曲
「き、気のせいです!大丈夫ですから…」
潤「そう?」
「今日はご馳走さまでした。」
潤「じゃあ、また。」
そそくさと背を向け走り出す僕の背中に投げかけらる先生の声。
ドアを閉める音がまだ、聞こえてこないから、先生の目が僕の背中にあるってことだ。
それだけで背中が熱くて、
擽ったく感じた。
そんな、もどかしいようなこそばいゆい感じから逃げるみたいにエレベーターホール目掛けてダッシュした。
ボタンを押して、
エレベーターが来るまで、
エレベーターがきて、
エレベーターの扉が開いても壁に寄りかかって息を整えていた。
心臓が口から出てきそう…。
頭も、熱病にかかったみたいにクラクラして立っているのがやっと。
ホントに…どうしちゃったのかな?僕。
天井を見ながら大きく深呼吸をしたら、少し気持ちも落ち着いて、頭の中の靄が少しだけ晴れたような気がしてホッとした。
でも、その分、今まで感じたことのない高鳴りに戸惑いを感じる自分がいた。
その自分は、あの笑顔にどきどきし、あの手のひらにほっとする。
もう、否定のしようがない。
僕は……あの人のことが好きなんだ…。