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マリア

第10章 夜想曲



「あ…の……怒ってない…の?」



礼音のあまりの変わりように見惚れてしまって、呆けたように顔を見つめていると、



突然、白い指先が伸びてきて僕の頬をつねった。



「いっ…たぁ…。」


礼「ボケッとしてるからだよ?」



気がつくと、もう、いつもの礼音で、



つねられた箇所を押さえる僕をニヤニヤしながら眺めていた。



「に、したって、いきなりつねらなくてもよくない?」


礼「えへっ。ごめんね?」



ペロッ、と舌を出した、と思ったら、



礼音の綺麗な顔が近づいてきて、



音もなく僕の唇にキスをした。





いつもだったらびっくりして突き放していたはずなのに、



突然だったのと、



いつもと違う空気を纏う礼音に驚いたのとでタイミングを逃してしまい、



礼音が解放してくれるまで僕はじっとしていた。



だって、



僕たちのキスはただ唇をくっ付け合う挨拶みたいなもので、



恋人同士がするみたいな濃厚なものじゃないから。



案の定、ほんの数十秒で僕は解放された。



礼「怒らないんだね?」


「今日は…ね?」



互いに顔を見合せ笑うと、



互いに額をくっ付けあった。



礼「フフっ。さーとし?」


「何?」


礼「呼んでみただけ。」


「もー、何なの?」



むくれる僕にいきなり抱きついてくると、礼音は小さな声で囁いた。








ずっと、私の側にいて、って…



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