マリア
第2章 前奏曲
雅「あっ、でも分かんない。聞き違いかもしんない。」
「…何だよ。」
…期待しちまったじゃねーか。
俺は、パンの袋をくしゃくしゃに丸め、雅紀目掛けて放り投げた。
雅「あっ!?ひどっ!!何、この仕打ち?」
「お前、メシは?」
雅「今月苦しいんだよなあ…」
寝転がったままスマホを取りだしタップしながら呟く。
「バイトしてたんじゃなかったっけ?」
雅「…それでも足んないんだよねぇ…おっ!?」
急に起き上がり姿勢を正す雅紀。
雅「んふふっ。やっぱ、口ではあんなこと言ってても可愛いねぇ。」
雅紀はエロい中年のオッサンのごとくニヤニヤ笑った。
「何?彼女?」
雅「まあ…ある意味彼女かな?」
「何だよ?それ?」
雅「翔ちゃんもさ、彼女とヤれないんならセフレでも作ったら?」
「俺、お前みたいにサカってねーし!?」
雅「あ、そ。じゃあ、彼女のエロい姿妄想しながらトイレで抜いてたら?」
「るせ!!バーカ!!」
余計なお世話だ!!
雅「ところでさあ、翔ちゃんの彼女って、確か双子だったよね?」
「それが何?」
雅「その片割れ、ってさ、男…だよね?」
「そう…だけど?」
雅「ふーん?」
雅紀は、ギリギリまで吸ったタバコを丁寧に揉み消すと、さっき俺が投げた袋の中に入れて大事そうにポケットにしまった。