
マリア
第10章 夜想曲
「こんにちは。」
潤「今日は…妹さんのお見舞いかな?」
「えっ!?ええ…まあ…。」
潤「仲直りは出来たの?」
先生は少し首を傾けるように顔を覗き込んできた。
「え!?あっ……はいっ!!」
潤「そう…それは良かった。」
笑顔の先生に釣られて、僕も笑顔になってしまう。
あれ、そう言えば今、
午後の診察の時間じゃ…?
先生は、ちら、と、腕時計を見た。
潤「ごめん。もう行かないと…」
「今から午後の診察ですか?」
潤「いや、今日は…」
そこまで言いかけた時、先生の電話が鳴った。
潤「ちょっとごめんね?」
僕から少し離れて、背を向け電話で話し始めた。
そして、話が終わると、電話をポケットにしまい、大きく息を吐いた。
「先生…?」
潤「あ、ああ…何でもない。」
浮かない顔してる…。
でも、僕と目が合うとニコッと笑って、いつものようにあの、大きな手で僕の頭を撫でてくれた。
潤「とにかく、妹さんとのこと…ホントによかったね?」
「は…はあ…。」
何故かしきりに時計を気にしている先生。
「あの…」
潤「これから人と会う約束をしててね?」
先生はまた、と片手をあげると、
白衣のポケットに手を入れ走り去っていった。
